【開催レポート】2026年6月8日(月)政経勉強会/講師:長野恭紘 別府市長

【開催報告】2026年6月8日開催 政経勉強会
講師:別府市長 長野恭紘氏
テーマ「別府から日本の景色を変える」

2026年6月8日(月)、赤坂「IsaI AkasakA」にて政経学修会主催の政経勉強会を開催いたしました。

今回は、大分県別府市長の長野恭紘氏を講師にお迎えし、「別府から日本の景色を変える」をテーマにご講演いただきました。

観光都市・別府のまちづくりを通じて、市民幸福度の向上や地域活性化に挑戦する数々の取り組みについて、豊富な事例を交えながらお話しいただきました。また、講演後の質疑応答では参加者との活発な意見交換も行われ、大変有意義な学びの機会となりました。

第1部 講演「別府から日本の景色を変える」
観光は「目的」ではなく「手段」

講演の冒頭、長野市長は「行政の最大の使命は市民を幸せにすること」と強調されました。
別府市では、クラウドファンディングによって実現した「湯〜園地」や、現在では約213トンもの温泉水を使用する「湯ぶっかけまつり」など、全国的にも話題となったプロジェクトを数多く展開しています。
しかし、これらは単なる観光客誘致策ではなく、市民が地域に誇りを持ち、地域を好きになってもらうための取り組みであると説明されました。
特に「湯〜園地」は、2016年の熊本地震後に落ち込んだ地域の雰囲気を変え、市民のシビックプライドを取り戻すことを目的として企画されたものであり、「観光は市民を幸せにするための手段であり、目的と手段を取り違えてはならない」という考え方が印象的でした。


既成概念を打ち破る『まちのアップデート』

続いて、別府市が実践している革新的な行政改革について紹介されました。

◉おくやみコーナー
これまで最大12課・60枚以上の書類が必要だった死亡関連手続きをワンストップ化。若手職員の提案から始まった取り組みであり、現在では全国から200件以上の視察が訪れる先進事例となっています。

◉たびスタ休暇
家族旅行などを理由に平日に学校を休んでも公欠扱いとする制度です。
観光需要の平準化によるオーバーツーリズム対策や、観光業従事者の働き方改善を目指した取り組みであり、現在では全国15自治体へと広がっています。

◉湯けむりライドシェアGLOBAL
コロナ禍以降深刻化した交通人材不足への対応として、全国に先駆けて導入されたライドシェア事業です。
長野市長自身や市職員約50名もドライバーとして参加し、現場の課題を直接把握しながら制度改善に取り組んでいるとのお話がありました。

◉Park-PFIを活用した公園整備
別府公園へのスターバックス誘致や春木川公園の再整備など、民間活力を活用した公園運営についても紹介されました。
従来は維持管理費の負担が大きかった公園を、市民の憩いの場であると同時に新たな賑わいと収益を生み出す空間へと転換している点が大変印象的でした。


次の100年へ向けた挑戦
「新湯治・ウェルネス」構想

別府市の観光課題の一つが、平均宿泊日数が約1泊と短いことです。
この課題を解決するため、別府市では九州大学や民間企業と連携し、「新湯治・ウェルネス」事業を推進しています。
温泉入浴による健康効果を科学的に検証し、腸内環境の改善や疾病リスク低減などのデータを蓄積・可視化することで、欧州の温泉保養地のような長期滞在型観光地への転換を目指しています。
さらに、その研究・実践拠点となる大規模施設について、民間投資により約100億円規模で整備が進められていることも紹介され、会場から大きな関心が寄せられました。


第2部 質疑応答

講演後の質疑応答では、多くの参加者から質問が寄せられました。

◉温泉資源の保護と観光振興の両立について

別府大学出身の参加者から、温泉の枯渇問題と資源保護について質問がありました。
このテーマについては、長野市長がご自身のYouTubeチャンネルでも詳しく解説されています。
https://www.youtube.com/watch?v=rFhw9s3YXd8

◉行政組織で挑戦を続ける原動力について
20代の公務員参加者からは、「保守的な行政組織の中で改革を進めるモチベーションの源泉は何か」という質問が寄せられました。
長野市長は、「汗をかく人が正当に評価される街をつくりたいという思いが原点です」と語られました。
さらに、「公務員は失敗しても会社が倒産するわけではない。だからこそ、公務員こそ最もリスクを取れる職業だと思っています。民間ができないことに挑戦してほしい。失敗したら私が責任を取ると職員には伝えています」との力強い言葉があり、参加者に大きな刺激を与えました。

◉広域連携によるインバウンド戦略について
インバウンド観光における自治体連携についての質問に対しては、長期滞在型観光の実現には別府単独ではなく九州全体での連携が不可欠であるとの考えが示されました。
現在、阿蘇市や高千穂町などとの連携による富裕層向け観光ルートの形成が進められており、今後は先進医療や健康増進サービスと組み合わせた高度なウェルネスツーリズムが大きな価値を生み出すとの見解が示されました。

おわりに
講演終了後は、長野市長との名刺交換や記念撮影が行われ、会場は最後まで熱気に包まれました。
「公務員こそリスクを取れる」「意地にかけても良い街をつくる」という長野市長の言葉は、政治・行政関係者のみならず、企業経営者やビジネスパーソンにとっても大きな示唆を与える内容でした。

長野市長、ご参加いただいた皆様、誠にありがとうございました。


政経学修会では今後も、「政治と経済をもっと身近に、より楽しく学ぶ」をコンセプトに、多彩な講師をお招きした勉強会や交流会を開催してまいります。
次回のご参加も心よりお待ちしております。


写真提供 笠原 泰三さん(写真家・フォトグラファー)